わいんです。
せっかく家を建てるのならば、年中快適に過ごせる家にしたい!
多くの人が思うことだと思いますが、そのためには家の断熱性能が大事になってきます。
実は私の仕事は研究職なのですが、断熱材の研究を5年以上やっていたことがありまして、今日は断熱材の元研究者が意外と知られていない事実について語りたいと思います。
断熱材の性能値
断熱材の性能値を表す指標はいくつかあります。
住宅業界でよく使っている熱貫流率もそうですし、他にも熱抵抗や熱伝導率なんてものもあります。
以下、素材研究の分野ではよく使われる熱伝導率を用いて説明します。
熱伝導率は字の通り、熱の伝えやすさを表す指標で、数値が小さいほど断熱性能が高いことを示しています。
熱伝導の仕組み
熱伝導率ですが、主に3つの成分に分解することができます。
その3つは、伝導、対流、輻射です。
伝導はその物質そのものを伝う熱伝導で、一般的には固体>液体>気体の順になります。
対流は流体(気体、液体)で生じる熱伝導で、密度(温度)の違いによって生じます。
温かい空気が上に流れるのも対流によるものです。
輻射は赤外線による熱エネルギーで、媒介する物質がなくても生じる熱伝導です。
例えば太陽光の熱も輻射によるものです。
断熱材の仕組み
とまぁこんな感じで3つの熱伝導成分があるのですが、断熱材は要はこれらの成分の熱伝導を低減するモノです。
我々の日常生活の環境(空間)で最も寄与度が大きいのが対流で、断熱材は主に対流を抑制するモノになります。
ではどうやって対流を抑制するのか?
それは空気の小部屋を作って、動けないように閉じ込めることによってなされます。
対流は空気の移動によって生じるので、断熱材はその動きを防いでいるというわけです。
断熱材が多孔質状のモノ(綿状だったり発泡体だったり)であるのはこのためです。
断熱材の種類
断熱材には様々なものがありますが、大きく分けると「繊維系」と「発泡系」になります。
繊維系の代表はご存知グラスウールです。
発泡系は色々とありますが、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等が最近使われております。
グラスウールは性能がイマイチなんてよく聞くと思いますが、熱伝導率はモノにもよりますが35~40mW/mK(数字が小さいほど高性能)程度になっています。
発泡系もモノによりますが、20~30程度になっており、確かにグラスウールと比べると高性能になっています。
よって、同じ断熱性能を確保しようとすると、グラスウールはその分厚くする必要があるということになります。
意外と知られていない?断熱材は劣化する
少し本質的な話になりますが、なぜ発泡系の断熱材の性能がグラスウールと比べて高いのか?
断熱材を構成するガラスとプラスチックそのものの熱伝導率の差もありますが、一番大きく影響しているのは断熱材の小部屋の中に閉じ込められている成分の差になります。
空気を小部屋に閉じ込める、という話を先ほどしましたが、気体の種類によって実は熱伝導が違います。
空気の主成分は窒素になりますが、動かない(対流のない)窒素の熱伝導率は約26mW/mKで、空気(窒素や酸素の混合気体)の熱伝導率とほぼ同じです。
グラスウールの場合は製造工程上、そのまま小部屋の成分は空気になりますが、発泡系の場合は空気ではなくそれぞれ発泡ガスになり、多くは空気より熱伝導率が低い気体成分になっています。
これが発泡系の性能が良い一番の理由です。
ところがこの発泡ガス、経時で徐々に空気と入れ替わり、断熱性能が劣化していきます。
特に高温環境化に置かれるとそれがさらに加速され、断熱性能が著しく劣化していくことになります。
発泡系を採用しているHMも自社に都合が悪いことはわざわざ説明しませんでしょうし、意外と知られていないんじゃないかな?と思いまして、紹介してみました。
ちなみに性能が劣化しても(発泡ガスが全て空気に置換されても)グラスウールとと同等程度の性能になるだけで、適切な環境で使用している限りはそれ以上に性能が劣化することはないと思います。
窓も同じ
実は断熱材だけではなく、窓についても同じことが言えます。
最近ではアルゴンガス入り、クリプトンガス入り等ありますが、これもガラス板の間に空気より熱伝導率の低い気体を充填しているため、高断熱性能になっています。
熱伝導率は、アルゴンが約18mW/mK、クリプトンが約9mW/mKです。
ガスの封止のされ方が発泡断熱材などと比べると良いのでガス置換の速度はそれほど速くないとは思いますが、経年で劣化していくことに変わりはありません。
とにかく永久的に性能を担保できるものではないということを知った上で、窓や断熱材の仕様等を選択してもらえればなと思います。
今日は専門分野だったのでついちょっと熱く語ってしまいました(汗)
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